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第39回日本結合組織学会と第54回マトリックス研究会を、2007年5月9日(水)、10日(木)、11日(金)の日程で東京北区「北とぴあ」において、合同で開催する運びとなりました。結合組織学会もマトリックス研究会も長い歴史をもつ伝統ある学術集会ですが、それぞれ39回目と54回目という区切りが微妙な時点での合同開催であります。
「そもそも結合組織とは何か?」という質問に対して、的確な答えを出すことはなかなか難しいことですが、結合組織は「組織を相互に結合する組織」という理解よりは、病理学者のVirchow(1821〜1902年)が定義付けたように、「細胞間の結合物質で結合されている組織」という答えが、最も理に叶っているようです(梶川欽一郎著:「結合組織」、金原出版、昭和59年発刊)。細胞間の結合物質は、現在で言う細胞外マトリックスを意味しますので、結合組織は「細胞外マトリックスで結合された組織」と言い換えることができ、結合組織研究は究極のところ、細胞外マトリックスやその産生細胞に関する生理的・病的研究に行き着きます。
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いっぽう、生体内での全ての細胞は、細胞外マトリックスによって維持されている微小環境があってはじめて生存が可能であります。これまでの医学・生物学の研究は細胞に焦点を当てており、細胞の生存や機能を支配する組織内微小環境が軽視されてきた嫌いがあります。しかし、近年になり、発生・分化、免疫、癌、炎症、再生などの生物学・基礎医学・臨床医学の先端研究の各分野において、組織内微小環境の重要性が注目されつつあります。すなわち、ここへ来てようやく、結合組織や細胞外マトリックスに関する研究が多くの生物学・医学研究の中で必須の研究課題になって来たわけです。
しかし、結合組織・細胞外マトリックスは、肝臓や腎臓といった臓器として捕らえることができず、全身臓器に分布するため、それらの機能や異常の解析には、臓器特異性を理解した上で遺伝子・分子レベルで総合的に研究することが必須となります。したがって、本分野は最も学際的な研究分野であり、異なるバックグランドをもった研究者の知識やアイデアの総結集によってはじめて発展が期待されると言えます。
私自身の研究生活を振り返ってみると、まず結合組織の形態的特徴と機能を電子顕微鏡を使って研究し、マトリックス成分やその代謝酵素の生化学的解析を経て、現在は病的組織の破壊と修復機構を形態、蛋白、遺伝子、個体レベルで解析しており、この間一貫して結合組織学会とマトリックス研究会で勉強させていただきました。全てが流動的でボーダーレスとなってきた生物学・医学研究において、今こそ細胞外マトリックスで結合された結合組織研究者が一同に会して、生物学から医学の基礎と臨床の諸問題を発表・討論できる場を提供し、区切りの良い次回の学術集会へ向けてメッセージを提言できる会にしたいと思っております。
今回の学術集会プログラムについては、今後結合組織学会ならびにマトリックス研究会の会員の皆様から広くご意見を聞きながら、タイムリーで魅力あるトピックスを取り上げたいと考えております。会員の皆様の積極的な参加によって、日本結合組織学会・マトリックス研究会の合同学術集会開催が、生物学から基礎・臨床医学における結合組織・細胞外マトリックス研究の更なる発展に結びつくよう心から祈っております。
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